お題 #あの店員さんがすごい
20年前のこと。
商店街でぼーっと信号待ちをしていました。
東北の風土に惹かれて、関東から引っ越してきて、一年たっていました。
しかしそのころは、仕事も人間関係もうまくいかず……
前に住んでいた土地がことさら良く思われて、引っ越してきたのは間違いだったかなーと思い始めていました。
月曜日からの仕事は行きたくないなあ、と思って青信号を待っていたところ、背後のお店の引き戸が、ガラッと開きました。
なんだ、なんだと思っていたら、中から出てきたお店のご主人が、わたしに言ったのです。
「お姉さん、ここの信号は押しボタン式だから、ボタンを押さないと信号変わらないよー」
お恥ずかしい、そのとおり。
しかしぼーっとしているあまり、気づかなかった。
同時に、びっくりしました😮
長時間待っていたわけではなかったのに、お店のご主人は、店内から見たわたしを心配して、わざわざ出てきて、代わりにボタンを押してくれたのです。
そして、思い出しました。
そもそも「東北いいなあ」と思ったのは、都会にはない素朴な温かさがあるからでした。
関東ではみんな忙しくて、わざわざ顧客でもない人のために、店からでて世話をしてくれるひとは少ない……
そして反省しました。
いまの仕事も人間関係もいいとはいえないけれど、自分から進んで馴染もうとしていなかった面もあるかもしれない。
それに、たまたま会社のアタリが悪かった、というのもあるかもしれない。
小さな一点だけを見て、全体を見た気になって、「引っ越してこなければ」と思っていたのは、了見が狭かったかも。
次いで、思いました。
このお店で、いつか買い物をしよう、と。
そのお店は個人経営の家具屋さんでした。
ご主人に信号の押しボタンを押してもらってから半年後。
同じ町内で引っ越すことになったので、ベッドを買いました。
量販店とくらべると、ややお高いものとなりましたが、それでも、まったく後悔はありません。
初心を思い出させてくれたご主人に、ささやかながらお返しができたかな、と思っています。
いまも、そのベッドを使って、毎日眠っています😴
この話を同じ東北のひとにすると、
「そんな親切な店主がいるんだ!」
と驚かれます。
東北のひとにかぎって、意外と東北のひとの良さを知らないことが多かったりして、灯台下暗しかなあ、と思います。
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